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【学生編】大学では○○を磨け![佐藤大輔教授 × ふたラボ]#1

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この記事では、現役の大学生からいただいた質問や相談に、北海学園大学経営学部の『佐藤大輔教授』が経営学の専門的な知見をベースに応えていき、次のアクションへつなげるための具体的な"学び"を提供していきます。

動画はこちらです。


大学では○○を磨け!【佐藤大輔教授 × FUTA LABO】

トークテーマ

第一志望の大学に落ちてしまいましが、現役で今の大学に入学しました。最初は納得していたつもりですが、就職や将来のキャリアのためにもやはり偏差値の高い大学を受け直そうかと考えています。
ただ、浪人するリスクもあって悩んでいます。どうすべきでしょうか?

スピーカー

佐藤大輔さとうだいすけ北海学園大学経営学部教授)
専門は経営学(マネジメント、経営管理)。組織における人々の行為や創造性などが研究領域。就職活動セミナーでの講師や、管理やマーケティングをテーマとする講演等多数。著書に「『創造性』育てる教育とマネジメント」同文館 2014年(編著)。

神野祐輔じんのゆうすけ(FUTALABO | 動画クリエイター)
北海学園大学卒。動画制作を通して若手人材に実践的な学びを提供する『FUTALABO(ふたラボ)』を創業。動画クリエイター兼カメラマンとしても活動中。最近はテレビCMの企画から撮影、編集なども行なっている。

良い大学を出ることの"意味"を真剣に考える

神野:自分の入った大学の偏差値が高い低いって気になる学生さんって結構いますよね。

佐藤教授:うん。やっぱり落ちた、受かった、納得いった、納得いかないって悩んでる人って意外と多いような気がするんだね。今回の質問者さんは、「いまの大学が第一志望ではない」っていうことは、「第一志望に準じるぐらいの大学には入ったんだけど、やっぱ第一志望に未練がある」っていう感じかな。

不本意入学』って大学では言ったりするんだけど、そういう人って大学のデータを見ると半分くらいで、先生をやっていても感じるのはみんながみんな第一志望に行っているわけではなくて、むしろ第一志望に行っている人の方が少ない印象。そうすると、実は今回の質問者さんのように「やっぱり受け直した方がいいのかな」「浪人したほうがよかったのかな」「本当に今の大学でいいのかな」って悩んじゃう人は多いかな。

ただ個人的に思うのは、もし大学を受け直して偏差値の高い大学に入れたとしても、それがいったい何の意味があるのか?っていうことは考えた方がいいかな。つまり、「社会に出るってときに良い大学を出ていることの意味がどの程度重要か?」っていうのは、少し真剣に自分の頭で考えたほうがいい。

学歴や大学の偏差値が就活とか社会に出るときに全く関係ないとは思わないのね。だけど、「じゃあ偏差値の低い大学だったら良い就職ができないか?」っていうと、優秀な人は偏差値の低い大学にもいて良い就職する人って必ずいるんだよね。もっと言うと、めっちゃ良い大学に行っててもあんまり就職は成功しなかったと思ってる人も意外といる。

そうすると一番大事なのは、偏差値そのものが高い大学であれば将来は保証されるとか、何か身に付くもののレベルが高いとか、そういうことでは全くないってこと。

偏差値の高い大学に行っても教員の教育レベルは変わらない

佐藤教授:偏差値の高い大学の先生と偏差値の低い大学の先生って実際いるんだけど、大学教員の間での大学の偏差値って教員の教育レベルの高さ低さには全然関係ないんだよね。偏差値の高い大学に入る先生が優秀だって話には全くならないし、逆もまた然りなんだよね。

そうすると偏差値の高い大学に行ったからレベルの高い教育を受けることができるっていうのは、「ない」とは言わないけど「ない」って言いたくなる(笑)偏差値が低い大学の先生はいまいちなのかっていうとそんなこと全くないからね。

大学の偏差値っていうのは入るお客さんとしての(学生側の)視点であって、教える側、教育する側からすると実はあんまり関係ないというか、そんなこと気にもしてないっていうか。

もちろん教えられる内容のレベルとかが学力的に違いはあるのかもしれないんだけど、先生のクオリティが上がる下がるって話しではない。

今後求められる、偏差値よりも重要な力とは?

神野:今回相談してくれた学生さんは、就職を意識して偏差値を求めるべきって考えているのでしょうか?

佐藤教授偏差値が何の能力を示しているかっていうことが大事なポイントなのかなって思う。偏差値は勉強の力で、勉強力があるってことは素晴らしいし、実際社会に出て仕事をしても勉強が必要なシチュエーションってたくさんあるのね。

だから、勉強ができるってことは評価の一つにはなると思うんだ。だけど、仕事で勉強が全てかっていうとそうでもない。勉強って結局、学んだことをアウトプットして役に立たせていく力を指し示しているんだけど、答えのないところで自分なりの答えを出さなきゃいけないっていうのがいわゆるAIの時代、これからの求められる人材ってはっきり言われていて、「競争力人材」ってキーワードも経団連から出てたりするんだ。

そうすると、「自分の頭で考える」とか「主体性」、「創造性」っていうのが求められているのに、"学力"っていうのは誰かが教えてくれたことを飲み込む力なわけだから別の能力なんだよね。

もっと言うと、「勉強って能力」っていう人もいるんだけど、極論個人的に思うのは、勉強ってやれば絶対に出来るようにできている。どの教科書も早いか遅いかは別にして全員が理解できるように作られてるわけで、誰かにしか理解できないことって絶対にないじゃん。そうすると、頑張った人とか努力した人はみんな勉強できるようになる。だから勉強の量を増やせば、絶対に偏差値が上がるっていう構造なんだよね。ただ早い人と遅い人がいるとか、そういうことだと思う。

そうすると勉強できるってことは素晴らしいけど、能力っていうよりかはどっちかというと努力賞に近いイメージ。ただ、「努力できるのも能力だ」って言ってしまうと能力かもしれないけど。

言いたいことは、本当の"能力"に近いのは「自分で新しいことを生み出す」、「知識を創造する」、「アイデアを生み出す」ってことのような気がするんだよね。で、まさにそれは大学に入る前の勉強ではなくて、大学に入った後の専門的な研究、自分なりに何か発見してテーマとして研究を深掘りしていくとか、調査をして論文を書くとか、そういうことだと思う。

いまの環境で徹底的に没頭できるものを見つけてみる

佐藤教授:個人的には一旦大学に入って悩んでる人に対しては、入ってから今後のことを考えた方がいいかなって思う。将来のことを考えると今やるべきことがあって、遡って勉強の能力を鍛えたとしても、結局その後入った大学生活では勉強力+α(自分で考える力、創造性など)のことを勉強しなきゃならないから、その能力を鍛えることに力を入れた方が社会に出てからの自分のキャリアを考える上では実はメリットが大きい。

神野:小・中・高までは学力という評価軸がメインだったけど、大学では仕事力や創造力など伸ばすべき力がたくさんある。
それらを自分がどう選んで、どういうふうに伸ばしていくかは、高校までの評価基準で「大学生活ではなにを学ぶか?」を考えるのではなくて、一回入った大学の中で考えた方がいいんじゃないかってことですよね。

佐藤教授:やっぱり社会に出てからのことを意識するとそれがすごい重要。自分が入った大学の中で、「自分がこの大学でできることは何なのか?」、「この大学で提供されているコンテンツの中で、自分に合っているもの、自分がやりたいと思えるものは何か?」ってことを見つけて徹底的に没頭することのほうが、実は大学を受け直すよりも圧倒的に得るものが大きいような気がするんだよね。

多分そういう人が、例えば、良い大学じゃないって言われる大学に入ったとしてもすごく良い就職をしているとか、大学あそこなんだけどめっちゃ能力高いよねとかっていうふうになってる人なのかなって思うんだよね。

社会を見渡してね、例えば経営者って高学歴の人は確かに多いんだけど、「じゃあ全員が高学歴か?」っていうと、全員どころか結構な人が学歴あんまり関係ないところで活躍してる。本当に学歴とか勉強が全てだったら全員東大生なわけで。でもそんなことない。道内で言えば、経営者で一番多いのは北海学園大学出身の人だったり。

そうすると偏差値だけじゃ全くないって明らかに証明されていて、「能力っていうのが勉強じゃない」ってさっき言ったことも踏まえて言えば、偏差値の高いところに入るための勉強をするよりは、入ってからのいわゆる勉強じゃなくて "研究" をして、自分なりに知識をアウトプットできるような力や方法を身につけた方がいいのかなって感じはします。

大学では、好きなことを見つけて没頭することに時間と労力をさける

神野:大学は新たなスキルや力を磨いていく場としては、(大学によるけど)授業も自由に選べるし、サークル活動やゼミ、学生団体もあったり、学力以外の力を伸ばす場や機会、チャンスは探せば結構選べる。これは大学ならでは面白みではありますよね。

佐藤教授:教員の立場から言うと、まさに入ってから自分が何をやりたいかを見つけられるかどうかが全てな気がする。

それは例えば、サークル活動で「何かの楽器がすごい上手くなる」でも構わないんだけど、「何か一つ見つける」ってことがやっぱり大事で、それに没頭するための時間と労力をさけるのが大学生のメリット

就職するときも、例えば「どれくらい単位取りました?」とか、「成績良いですか?」なんて絶対聞かれないからね。結局、大学での勉強の成果が仕事力に直結するなんて思ってる人はほとんどいないっていうのがはっきり言えることなんだよね。

じゃあ何を聞かれるかというと、『ガクチカ(学生時代力を入れたこと)』って言ったりするけど、「学生時代に自分で生み出したこと」とか「考え出して実行したこと」、「成果を出したことなんですか?」ってことを聞くのは結局仕事ではそっちの方が大事だからって思われてるから。

没頭できるものやことを見つけることができたら学歴に関する悩みは消える。

佐藤教授:大学生として大学の中でどれだけの学びを得たか、それは専門的な知見の勉強だけじゃなく、さっきのプラスアルファの「自分なりにこうした方がいい」「〇〇したほうがいい」ってことを何か見つけて、それに没頭して成果を出すことができたかどうか、そっちに力を入れた方がいいと思うし、もしそれ見つけれたらこういう悩みって消えちゃうと思うんだよね。良い大学に行くより今やってることの方が夢中になれるし、むしろこの大学に入ったからこそこれに気づけてよかったって思ってるはずだから。

だからあんまり大学の名前、ネームバリューに期待しすぎない方がいいかな。これからの時代、学力だけで渡っていけるほど甘くもないような気がするので、やっぱりその過ごし方っていうのは真剣に考えた方がいいかなっていう感じはするよね。

周りに流されるのではなく、気付いて自分で考えて行動できるかが大事

神野:しかも今回質問してくれた方は大学一年生。タイミングとしては結構早い段階でこういうことに気づけてるってことはすごいチャンスだと思うので、視聴者の中でも「いやいや、これまでずっと勉強してきて、急に『学力なんて必要ないよ』なんて先生も誰も教えてくれてないよ」って驚いてる方もいると思うんですけど、そこが大学の自由っていう面白みでもあり、落とし穴でもある。

自分で気づけないと「先生に言われたことしかやらない」っていう高校までのスタンスでいると、この仕組みの変化に気づかずに4年間過ごす子が多くなってしまう。そして就活が始まってから「そんなの聞いてない」って慌てて準備をする。僕の周りの人を見てても多いなって思ったのと、早い段階でいまの自分の中と「偏差値や価値観はこのままでいいのか」って疑問を持って対話をする、この気づきがすごい重要かなと思います。大学は本当に自由だけど、自分でどれだけ気づいて動けるかはすごい問われる部分ではありますし、そこで個人の差が出ますよね。

佐藤教授:だからその大きなものに流されるんじゃなくて、自分のやりたいこと、自分の頭で考えてそれを選んで実行していくことができるかってことが問われる。高校みたいに「大きなものに巻かれていればそれなりに成果が出るんだ」ってほど甘くないって考えた方が良いんだよね。

ある意味厳しさがあるんだけど、言い方を変えればそれって『自由』じゃん。「みんなと同じようにやんなくてもいいんだ」とも言えるわけで。だからなんかそれがすごく楽しいことなんだっていうふうに思った方が良い。

学力以外で勝負するとチャンスは何倍にも広がる

神野:学力以外でも勝負できるフィールド、分野があるって思うと意外とチャンスはある。

佐藤教授:正直言わせてもらうと、この人がもう1回受験し直しても多分良い大学受からない気もする(笑)それは分かんないけどね。多分勉強するのに向いてないから思うような成果が出なかったわけでしょ?向いてるんだったら別だけど、勉強するのに向いてなかったら「もうひとつの選択肢があるよ」ってことを言いたくって。それがさっき言ったプラスアルファってところで、いわゆる勉強力じゃなくて実践力、創造力を鍛えた方がいいわけで、そっちの方が向いてるかもしれない。苦手なんだけど高校までの大事な価値観としての偏差値で勝負し直すっていうのは割の悪い勝負のような気がするんだよね。

そういう人って実践力とか創造力の方が向いてる可能性があるから、「受験ってこんな感じだったんだ」ってポジティブに捉えて、「おれはもう一つの選択肢で勝負するべき人間なんだって気づけたからよかった」って思った方がいい。そしてそういう力を鍛えることはその人に向いてるから楽しく学びを進められるし、結果も成果もついてくるって思うかな。

神野:今回頂いた悩みが、就職とか将来のキャリアを考えて、偏差値の高いキャリアを積んでいくべきかどうか悩んでいるっていう話だったんですけど、ぜひいままで測られてきた「学力」っていう評価基準以外にも、社会で求められている力っていうのは実践力であったり、創造力、発想力、色々と伸ばすべき力がある。少し社会の目線を変えてみればまた見え方が変わってくるんじゃないかという話ですね。

ぜひそういう形で色々とトライして見てください。大学生活はそういう意味ですごい楽しいと思うので、色々とやって見たほうがいいと思います。