この記事のライター
このシリーズでは、実践的なプロジェクトを進める上で役に立つリサーチデザインの考え方を数回に分けて紹介していきます。
どなたでも活用できるように、実際のプロジェクトや仕事のデザインに応用して説明するので、「プロジェクトで行き詰まっている」「どう進めたらいいかわからない」「今何をしているんだろう」と迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
リサーチデザインとは?
研究者は学術的な論文を書くことが仕事の1つです。論文は、好き勝手な形式で書けるものではなく、ある程度の決まりがあります。ここでは、論文を書くときの決まりや形式をリサーチデザインと呼びます。
具体的に、何かの調査結果を伝えるために書く論文は、以下を記述するのが一般的です。
試しに論文の検索サイト「Google Scholar」で自分の今興味があることや学んでいる学問のキーワードを検索してみてください。基本的にはどのような論文でも似たような形式になっていることが分かるはずです。
続いて、このリサーチデザインの考え方をチームプロジェクトや仕事のデザインに置き換えていきます。
今回は以下のように置き換えることにします。
では各項目を簡単に説明していきます。
① プロジェクトテーマ
まず①プロジェクトテーマは、自分が所属しているプロジェクトの名前です。例えば「地方活性化のための学生主催・参加イベント」とかですね。ただ、実際にはもっと具体的なテーマになるでしょう。
② プロジェクトの動機と問題意識
次に②プロジェクトの動機と問題意識は、プロジェクトの動機や目的や問題意識です。 「なぜ、このプロジェクトをするのか?」「このプロジェクトをしてどんな問題を解決することになるのか?」など考えることが色々あります。
実は、<②プロジェクトの動機と問題意識と④問い〉がプロジェクトにおいて最も重要な項目です。
③ これまでのプロジェクト
③これまでのプロジェクトは、これまで似たようなプロジェクトがされてこなかったかを調べることです。
そして、自分たちが実施するプロジェクトにはこれまで実施されてきたものと、どのような違いや新しさがあるのかを明確にすることです。
④ 問い
④問いは、プロジェクトにおける問いです。例えば、「なぜ、地方には若者が少ないのか?」 「どのように地方を活性化させることができるのか?」といった問いです。
この具体例をみても分かるように、抽象的過ぎる問いだと、どのように答えればよいのか分からなかったり、アイデアにつながらなかったりすることがあるので非常に難しく、ゆえに重要です。
⑤ 仮説
⑤仮説は、<④問い>に対してどのような答えが想定されるかを予測するものです。「なぜ、地方には若者が少ないのか?」という問いに対して、「なぜならば、地方には若者が魅力だと感じるものがないからだ」という仮説が立ちます。
もちろん、仮説は1つだけではなく、たくさんある場合もあります。
⑥ プロジェクトの実施方法
⑥プロジェクトの実施方法は、プロジェクトでどのように問題をするのかという具体的な方法です。例えば、イベントを実施したり、インタビューをしたり、メディアで発信したりといった様々な方法が考えられます。
ここまでがプロジェクトの計画にあたる部分でしょう。
⑦ プロジェクト後の分析
⑦プロジェクト後の分析は、プロジェクトが終わった後に果たして②〜⑥がうまくできたのか、実際にはどんな結果が生まれたのか、どのように解釈できるのかなどを議論することです。
⑧ プロジェクトの意義
⑧プロジェクトの意義は、プロジェクトにはどんな意義があったのかを議論することです。<②プロジェクトの動機と問題意識や、④問い>とのつながりを意識することが必要でしょう。
⑨ 限界と今後の展望
最後に⑨限界と今後の展望は、プロジェクトを終えてどんな限界があったのか、足りなかったこと、もっとこうすればよかったということを考えます。
また、これから同じような問題に取り組む上で、どうすればもっと良くなるのかを議論します。
さいごに
以上①〜⑨を考えることで、良いプロジェクトのデザインとなるでしょう。また、これらの要素ひとつひとつのつながり(ストーリー)を洗練させていくことで面白いプロジェクトとなるでしょう。
さらに、実際のプロジェクトでは、これらの要素をキレイに順番に取り組むことはできません。計画をしているうちに、テーマが変わったり、問いが変わったり、仮説が変わったりといったことは当然あります。むしろ変わらない方がおかしいかもしれません。
したがって、今回紹介したプロジェクトデザインは、プロジェクトをする上での思考の整理のために使うものとなるでしょう。また、この記事を参考にして、プロジェクトのフォーマットシートなどをつくると、より頭の中が整理できるかもしれないですね。
今回は、リサーチデザインについて簡単に述べ、実際のプロジェクトにどう応用できるのかを簡単に紹介しました。
次回はリサーチデザインのなかでも問題意識に注目して議論していきたいと思います。